いとうせいこうが叫び、サンガツが奏でる祝祭空間。『F/T13オープニング・イベント』レポート

テキスト:CINRA.NET編集部

「舞台」の枠を飛び越え、街の人々と触れ合う『F/T』



2009年に『フェスティバル/トーキョー』(以下『F/T』)と名付けられ、「あたらしいリアルへ」というテーマのもと始まった舞台芸術祭には、ロメオ・カステルッチやリミニ・プロトコル、山海塾といった世界的に著名なカンパニーが集まっていた。ただ、当時はまだ生まれたばかりの舞台芸術祭。関係者内でも、その内容を正確に理解する人は少なく、必死でフェスティバルとしての存在感をアピールしていた印象だった。それから4年あまり。年を追うごとに形を変えながら、数々の先鋭的な演劇作品を発表してきた『F/T』。今や演劇舞台関係者のみならず一般層にも浸透しつつある。

そして11月9日、6回目を迎えた『F/T13』が華々しく開幕した。この開幕を記念して、拠点となる池袋西口公園では『F/T13オープニング・イベント』が開催。すべて無料で開放され、あらためて池袋という街への「お披露目」の場となった今イベント。いったい、どんな内容の企画が開催され、池袋の人々はどのように反応したのだろう?

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『F/T13オープニング・イベント』風景 (c) Miyu Terasawa

『F/T13』に関わるミュージシャンたちによるフリーライブが開催



会場後方に設えられた、ケバブやタイラーメン、沖縄そばなどのアジア屋台が「お祭り感」を高め、『F/Tモブ・スペシャル』の大練習会で、近藤良平、三浦康嗣(□□□)らが、観客を湧かせた後、野外ステージでは、3組のアーティストによるフリーライブが行なわれた。とはいっても、単純に祝祭的な内容にはならないのが『F/T』の『F/T』たる面白さ。観客の視線を集める中、トップバッターをつとめたサンガツは、静寂を奏でるかのようにエクスペリメンタルな曲目を演奏。都会の喧噪の中、突如発生した静謐な音響空間を初めは驚くように、そして興味深く聴き込もうとする観客の姿が印象的だった。

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サンガツ (c) Ryosuke Kikuchi

続いて、『F/Tモブ・スペシャル』の大練習会にも登場した三浦康嗣(□□□)は、観客からのリクエストに答えながら□□□の曲を演奏。キーボードとギターでしっとりと「うた」を聴かせる内容に。『F/T13』主催プログラムの1つ、リミニ・プロトコル『100% トーキョー』の音楽を担当する、LITTLE CREATURES のTakuji(青柳拓次)率いる「焚火」からは、Takujiと共に木津茂理、大島保克が参加。八丈島太鼓や三線などを取り入れ、最後には”東京音頭”まで繰り出されたその演奏には、池袋の街を歩く幅広い年齢層の人々が足を止め耳を傾けていた。

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三浦康嗣(□□□) (c) Ryosuke Kikuchi

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焚火 (c) Ryosuke Kikuchi

ノーベル文学賞作家による「震災以降の言葉」が、いとうせいこう、宮沢章夫らの声に乗って、池袋の街中に響き渡る



そして、早くもこの日のハイライトとなったのは、同じく『F/T13』主催プログラム『光のない。(プロローグ?)』を演出する宮沢章夫が、盟友・いとうせいこうや、Dub Master Xと共に行ったリーディング公演だろう。

オープンマイクで観客も飛び入り参加することが可能だったこの異色のライブ。ノーベル文学賞受賞作家エルフリーデ・イェリネクが東日本大震災の後に発表したテキスト『光のない。』は、決してわかりやすい内容のものではない。しかし、いとう、宮沢、観客の声は重なり合いながら池袋の街に響き、Dub Master Xによる音響効果も加わって、鋭利な刃物のように聴衆の耳に突き刺さっていく。初めはあっけに取られたかのように静かに見守っていた聴衆たちも、徐々に身体を揺らし、その数もどんどん膨れ上がっていった。オープンマイクにも途切れることなく参加者が現れる。宮沢章夫はこの夜、ステージの感想をTwitterで連続投稿していた。

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宮沢章夫 (c) Ryosuke Kikuchi

現実をより深く見つめていくための「物語」



この他にも『F/Tモブ・スペシャル』や、批評家たちによるトークセッション、美術家・椿昇による巨大インスタレーション作品『KEINE STIMME.-声のない。inspired by EPILOG?』のお披露目など、盛り沢山だったこの日のオープニングイベント。『KEINE STIMME.-声のない。』『F/Tモブ』については、今後稿をあらためてじっくりと紹介していきたい。

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『F/Tモブ・スペシャル』大練習会 (c) Miyu Terasawa

F/Tのプログラム・ディレクターの相馬千秋は、オープニングイベントに集まった報道記者たちを前に『F/T13』をこのように説明した。

「『F/T』では東日本大震災後の2年間、『私たちは何を語ることができるのか?』『言葉の彼方へ』といったテーマを設定し、私たちがどのように現実と向き合い、掴み直していくのか、ということを模索してきました。今年は『物語』に対してどのように向き合っていくのかがテーマとなります」

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椿昇『KEINE STIMME.-声のない。inspired by EPILOG?』のお披露目とともに行われた「F/T13 オープニング・セレモニー」の様子 (c) Ryosuke Kikuchi

ここで相馬が言う「物語」とは、美辞麗句によって現実を美しく装飾するための「物語」ではなく、現実をより深く見つめていくための「補助線」としての「物語」のことを指している。とはいえ、シリアスになることだけが現実と向き合うことではない。「ハレ」と「ケ」という言葉があるように、フェスティバルという「ハレ」の場から、現実という「ケ」を見つめていくこともまた、大切な視点だ。相馬は続ける。

「東京は常に人々が行き交う、商業化された祝祭的都市です。そんな場所で芸術がどのような祝祭性を付け加えていくことができるのか、しっかりと問い直さなければなりません。今回行っている『F/T13オープニング・イベント』は、これまでよりも幅広い層にアプローチするための『入り口』的な枠組み。根底には社会的な問題意識を持ちながらも、『F/T』をより多くの人に届けるために『ハレ』の場を演出しているんです」

これから12月8日までの1か月間、『F/T13』では世界各国のカンパニーによるパフォーマンスが日夜上演されていく。フェスティバルでありながら「社会性」や「問題提起」をも含んだ同イベント。当サイトでは、今後もその成果を随時報告していこう。

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